独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
リビングの時計を見て、大きくため息をついた。
タイムリミットの午後十時まで十五分を切った。コトコト煮込んだビーフシチューがすっかり冷めてしまっても、樹さんはまだ帰ってこない。
「はぁ」
再びため息をつくとソファの上で膝を抱えた。
帰りたくないな……。
ひと目でいいから会いたいという思いが、あふれてやまない。
寂しさを紛らわすために、左手を高く伸ばして薬指に光るエンゲージリングをじっと見つめた。
照明の灯りを受けて、ダイヤモンドがキラリと輝く。
綺麗……。
その美しさに見惚れていると着信音が鳴り響いた。慌ててスマホを手に取る。
樹さんからだ!
待ち焦がれていた人からの連絡に心躍らせながら、応答ボタンをタップした。
「もしもし」
『今終わった。急いで帰るからもう少し待っててくれる?』
「はい。もちろんです。気をつけてくださいね」
『うん。ありがとう』
やっと会える……。
短い通話が終わるとすぐに、胸がドキドキと音を立て始めた。
今終わったってことは、これから病院を出るのかな。それとも、もうマンションに向かっている?
あと十分ほどで会えるとわかっていても落ち着かない。ソファから立ち上がり、リビングをウロウロ歩き回る。