独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
食材も道具もお店のほうですべて用意してくれるため、手ぶらで気軽にバーベキューが楽しめるらしい。
「あの男は来るの?」
「あの男?」
唐突にそう言われても、誰のことなのかさっぱりわからない。
「以前、駅で偶然会ったときに一緒にいた彼だよ」
説明を聞き、たまたま帰りが一緒になった加藤君と飲みに行ったときのことが頭に浮かんだ。
「ああ、加藤君ですね。来ますよ」
あのときはお酒を飲みすぎてフラフラになってしまい、加藤君に支えてもらったんだよね……。
バッタリ会ったときのことを思い返していると、重なっていた手にキュッと力がこもった。
「そうか……。来週の日曜日は仕事が休みだから、バーベキューが終わったら車で家まで送るよ」
「ひとりで帰れるから大丈夫です」
「俺が送りたいんだよ」
バーベキューの開始時刻は午後六時から。帰りは遅い時間にならないし、折角の休みを邪魔しては申し訳ない。
そう思ったものの、『送りたい』と強く言われては断れない。
「ありがとうございます」
「うん。連絡待ってるから」
「はい」