独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「ピアノコンクールで最優秀賞を受賞したことも、中学校のマラソン大会ではビリだったことも知ってるよ」
樹先生の口角が、ゆるりと上がった。
な、な、なんで?
ピアノを習っていたのは幼稚園のときだし、マラソン大会の黒歴史は家族しか知らない。
もしかたら、過去が見える能力があるのかもしれない……。
一瞬、そう思ったものの、すごく単純なことに気づいた。
「あ、お兄ちゃんから聞いたんですね」
「どうだろうね」
樹先生が座席の肘かけに頬杖をつき、再びクスクス笑い出す。
私をからかっておもしろがるなんて意地悪だ。
「もう……」
頬を膨らませながら、まだ笑っている樹先生を睨みつけた。
けれど楽しそうな笑顔を見たら、もう憎めない。つられるように笑うと、大きな手が私の手にふわりと重なった。
「来週はバーベキューだったよね? どこで何時から?」
「赤坂プラチナガーデンの屋上のバーベキューテラスで、午後六時からです」
赤坂プラチナガーデンとは、駅から徒歩十分ほどの距離にあるショップやレストラン、映画館などが集合した商業施設だ。