同期のあいつ
向かったのは白川さんの勤務先。
横浜の駅から少し離れたところにある大学の付属病院。
私は電車を乗り継いで、4時過ぎに到着した。

「すみません、小児外科の白川先生をお願いします」
病院の受付に声を掛け、
「少々お待ちください」
と案内された。

大きな総合病院のホールは3階までの吹抜けで、落ち着いていて間接照明が優しい雰囲気を出している。さすがに午後の時間は外来患者も少ない。
よく見ると、カボチャやコウモリ、お化けの飾りが所々にあった。
きっと、今日のために準備したんだろうな。


今朝早く、私は白川さんからメールをもらった。

『急で申し訳ないけれど今日の午後って時間がありますか?』

突然のことで驚いたけれど、イヤではなかった。
きっと白川さんに嫌われているんだろうと思っていたから、むしろうれしかった。

『夕方からで良ければ、空いてます』

『良かった。ちょっと手伝ってもらえる?』

どうやらデートのお誘いではなさそうだけれど、

『いいですよ。3時には会社を出られると思います』

『じゃあ、病院まで来てもらえる?』

『はい』

昨日は私のために休みを潰させてしまったから、少しでも役に立つならと即答した。
その後病院までの地図と、今日のハロウィンパーティーの案内が送られてきて、本当に人手が足りなかったんだと知った。


「一華さん、お待たせ」
白衣姿の白川さんが、迎えに来てくれた。

「忙しいのに、すみません」
「いいんですよ。僕の方こそ、今日になって呼び出して申し訳ない。イベントを大きくしすぎてしまって、スタッフだけでは手が足りないんだ」
「いいえ。今日はたまたま、早退の予定にしていたので大丈夫です」
「そう、良かった。じゃあ、行きましょうか?」
「はい」
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