同期のあいつ
本当の自分

動き出す未来

翌朝出勤しても、会社に変化はなかった。
事態は悪化もしなければ好転もしていない状況で、みんなの表情も暗いまま。

「おはようございます」
私は精一杯明るく声を掛けた。
「ああ、おはよう」
みんな返事をしてくれるけれど、やっぱり元気がない。

「おはようございます」
駐車場で別れた鷹文も、遅れて入ってきた。

「部長、ちょっといいですか?」
真っ直ぐ部長のデスクに行くと、小さな声で話し始めた。

しばらくして、部長と鷹文は会議室へと向かった。


「あれ、髙田課長は?」
「部長の決裁が急ぐんだけど」
突然姿を消した2人を、みんなが探している。

「なかなか帰ってきませんね」
「そうね」

事情を知らないはずの小熊くんも心配そう。

「一華さん、何か知ってますか?」
可憐ちゃんにも聞かれるけれど、
「いいえ」
知っていても今は答えられない。


しばらくして、鷹文が戻ってきた。
デスクを片付け急ぎの指示を出すと、どこかに電話をしてからまた席を立った。

チラッと私を見て何か言いたそうにしたものの、声を掛けてはくれなかった。

「どうしたんでしょう。随分厳しい顔でしたね」
「・・・そうね」
鷹文にとっても苦渋の決断だから。

「鈴木」
遅れて戻ってきた部長が私を呼んだ。

「何でしょう」
立ち上がって返事をすると、
「ちょっと来てくれ」
と会議室を指さす。
「はい」

何か言いたそうな小熊くんを残して、私は会議室へと向かった。
< 166 / 248 >

この作品をシェア

pagetop