同期のあいつ

SIDE 鷹文

「高田課長」
取引先との商談を終え帰ってきた俺に、部長の声がかかった。

「何でしょうか?」
「鈴木はどうしたんだ?」
「体調不良です。昨日から熱があったみたいですので」
「そうか、辛いならとっとと休めばいいのに、無理するから倒れるんだ」
「そうですねえ」
その通りだと頷いた。

ん?
部長が不思議そうに見ている。

「何か?」
「珍しいなあ。いつもはかばうのに」

まあ、普段は俺がかばう側で部長が叱る係り。そうやってバランスを保ってきているから。

「今回は、自業自得です」

いい年をして自分の限界もわからないとか、後先考えずに突っ走るとか、いい加減勘弁して欲しい。

「仏の高田も怒ることがあるんだなあ」
おかしそうに笑う部長。

「笑い事ではありません。鈴木の分の取引先周りまで回ってきて体がもう一つ欲しいくらいですから」
つい愚痴が出た。

「手伝おうか?」
「いえ、小熊と手分けしますから」
「そうか。でも鈴木の奴、昨日の残務は遅くまで残って済ませたんだろ?」
「ええ、倒れるくらい体調が悪かったはずなのに、誤字1つない完璧な仕事でした」
「フーン、さすがだな」

部長は誰よりも鈴木にうるさい。文句も言うし、小さなミスも見逃さない。
でも、それは期待の裏返しだと俺は思っている。
現に、彼女の仕事はミスが少ないし、期限に遅れることもない。
反面、女性とは思えない大胆さで相手の懐に入っても行く。
ここ数年にとってきた新規の契約だって俺を上回る。
鈴木の有能さを、部長が知らないはずはない。
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