金の乙女は笑わない


フィルタイトでは城に残っていたアイリスがアランの帰りを待っていた。

自分がトロイアへ帰ればこの戦争は起きずにすんだのか?

自分のせいで騎士やその家族が傷つくなんて耐えられない。

窓の外を眺めながらアイリスは手を組み祈った。

「どうかお願いです。誰も傷つかないで……、神様……アラン様をお守りください」

アイリスの瞳からポロリと涙がこぼれ、頬をつたって落ちていく。

その足元でクンクンとないているガイロを抱き上げた。

「ガイロ、アラン様に何かあったら私……」

胸が締め付けられ、苦しくなっていく。

アラン様が心配?それもある……でもそれだけではない。


この気持ちは……。


ああ……。


私は……。


アラン様が好きなんだ。

やっと、自分の気持ちに気づいた。

アラン様に会うたびに感じていた。

一緒にいるだけで幸せで、ふわふわほかほかして体が震えて涙が出てくる。


初めて知るこの気持ち。

会いたい。

アラン様に会いたい!!

強く願ったその時、抱きしめていたガイロが銀色に輝きだした。

何……?

目が開けていられないほどの光が集まり、ガイロの首輪に集中していく。

ガッキィーーン!!

ガイロが着けていた首輪が音をたてて壊れた。

アイリスは驚き床に散らばった首わの破片を眺めていると、抱きしめていたガイロがぴょこんと飛び降り、下からじっと見上げてきた。

「アイリス……」

少し低めのやさしい声が頭の中に響いてくる。

「えっ……だれ?」

「アイリス、私だ、ガイロだ。長い間、司祭長につけられた銀の首輪によって、力を封じられ小さな犬の姿だったが、時は来た今宵は満月!我が力が最大限に出せる。アイリスの思いの力が加わり首輪は砕け散った。アイリスの願い聞き届けよう!」

「ガイロ、あなたはいったい……」

「我は精霊獣、アイリスあなたを守りしガーディアン」

そう言うとブワーーッとガイロの毛が逆立ち小さな子犬の姿から、三メートルの精霊獣の姿へと変わった。

「我とともに戦場へ行こう。このような戦争は止めねばならない」

「私に戦争が止めることが出来るのですか?」

「大丈夫だ、さあ我に乗れ!今行けば日が昇りだす頃にはアランの元へ着けるだろう」

その時、アイリスの部屋から声が聞こえてきたことに気づいたエイミーが、あわてた様子で部屋
へと入ってきた。

「アイリス様、何かありましたか?大丈夫です……か?」

ガイロを前にしたエイミーが驚愕し、一瞬固まってしまったが、息を吸い込むと悲鳴を上げた。

「キャーー!!な……何なんですか!アイリス様、危険です。こちらに来てください!!」

エイミーは必死にアイリスを守ろうと前へ出る。

「エイミー大丈夫よ、この子はガイロよ」

エイミーが落ち着くよう、ゆっくりと説明しガイロをやさしくなでた。

「ガ……ガイロなのですか?でも大きさが全然違う……」

アイリスに説明されても頭が混乱し、うまく整理できないため体がガクガクと震えてしまうエイミー。

「エイミー聞いて、私はガイロとともに、。この戦争を止めるため戦場へ向かいます」

「そんな、危険です!」

「アラン様を助けたいの。お願い、行かせて!」

エイミーは必死に首を左右に振りアイリスの手を握りしめていた。

「だめです!行かせられません!アイリス様に何かあったら……」

「案ずるな、アイリスは我が必ず守る」

目に涙を浮かべ訴えるエイミーだったが、目の前にいるガイロがしゃべりだしたため、ぴたりと涙が止まり、手の力を弱めてしまった。

アイリスはエイミーの手をするりと抜けると、ガイロに走り寄る。

「時間がない、急ぐぞ!」

ガイロがそう言うと、アイリスの体に自分の風の力を込めていく、するとアイリスの体がふわりと浮き、白く透き通った翼が出来上がった。その姿は正に天使そのものだ。アイリスはゆっくりと羽を動かすと、満月の輝く夜空へとガイロと共に飛び立った。

部屋に残されたエイミーは呆然としていたが、はっと我に返ると叫んだ。

「ガ……ガイロがしゃべったーー!!そ、それにアイリス様ーー!!」

その声は部屋中いや、廊下にまで届いた。

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