金の乙女は笑わない
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その頃、戦場の真っ只中にアランはいた。
剣がぶつかり合い金属音が鳴り響く。
悲鳴、怒号が飛び交い文字どおり地獄絵図。
アランはアルとともに剣を持ちトロイア兵を切り裂いて行く。
そこへ一人の騎士がボロボロの状態でやってきた。
「陛下持ってまいりました」
にやりと口角を上げるアラン。
「よくやった。皆一旦引け後退だ!!」
フィルタイト軍が後退し、驚くトロイア軍兵士達、そして王妃は遊びが終わってしまったかの様な言葉を吐く。
「あら、もうおしまいなの?つまんない」
「フィルタイトは何を考えているのでしょう?少し様子を見たほうが宜しいかと……」
「そうねぇ。こっちには味方になってくれる人たちがいるし、様子を見ましょう」
扇子で口元を隠し優雅に微笑み、お茶を楽しむ王妃だった。
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戦場に現れたボロボロの騎士は一週間前よりトロイア兵士として潜入していた騎士だった。
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一週間前……。
「なあ、本当に戦争始めるのかな?」
「どうだろうな」
「しかし、一度負けている国に戦いを挑むって、どうよ?」
「俺たちは国のため、家族のため従うだけさ」
知り合いになった兵士とちょっとした会話を交わしながら、城内の様子や状況、部屋の位置など
を確認していく。
騎士は目的の部屋まで行き、確認するとその時が来るのを待ち、行動に移すことにした。
六日後そのときが来た。
王妃は司祭長を連れ戦場へと向かったため、城内は閑散としていた。
騎士は隠れていた部屋から出ると、目的の部屋までやってくる。
「ここが司祭長の部屋だな」
部屋の取っ手に手を掛けるが鍵が掛かっているため開かない。
「やはり鍵が掛かっているな」
靴の踵からピンを取り出すと、鍵穴に通しカチャカチャと動かす、するとカチンと小気味の良い音が鳴り戸が開いた。
人に見られないよう素早く部屋に入ると、目的のものを見つけ出すため動き始めた。
ここにはないのか……。
あきらめかけた頃。
いくつかの引き出しから書状を見つけだした。
これだな!!
騎士は書状の中身を確認すると、驚愕で目を見開いた。
「何ということだ!」
すぐに司祭長室から飛び出すと、アランのいる戦場へと馬を走らせたのだった。