となりに座らないで！～優しいバレンタイン～

優しいバレンタイン

　たぶん……

　口の中に広がった感覚は甘いのだと思う……

　それよりも、頬に当たる風のほうが冷たいのかもしれない……



　どのくらいの時間が過ぎたのだろうか？
　突然鳴り響いた、誰かのスマホの着信音に我に返り、あたりを見渡した。


　そこは、見覚えのない街並みの、見知らぬ公園。

　イルミネーションされた木々に囲まれた、噴水の周りには、待ち合わせの男女であふれている。

　彼女達の手に下げられている鮮やかな紙袋が目に入り、今日がバレンタインデーであった事が頭をよぎった。胸の奥から、グーっと息苦しさが押し上げてくると同時に、自分の口の中が甘いことに気づいた。

　手には、蓋をあけたままのブランドのチョコレートが綺麗に並んでいる。