となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 噴水から少し離れたベンチに座っているが、どうやっててここきたのかさえ覚えがない。

 もう一度、両手で抱えていたチョコレートを一粒指でつまんだ。
 そのまま、口の中にそっと入れると、甘いはずのチョコレートがただ冷たくて、ツーっと涙が頬に伝わった。


 その時、ドサッと音がしたと同時に隣に影ができた。誰かがベンチに座ったのだと分かった。


 出来れば、隣になんて座ってほしくない。


 仕方なくチョコレートの蓋を閉めようと箱をもちあげると、目の前に大きな手の平が差し出された。
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