となりに座らないで！～優しいバレンタイン～

　たどり着いたのは、よくうちの会社が二次会で利用するバーだ。帰った人も居るし、グループも別れたのだろう、社員は二十人くらいに減っていた。


「僕たちは、こっちの席の方がいいよね？」


　加藤君に促され、社長や一也の座るテーブルとは離れたた場所に比較的若い社員が座った。そもそも、二次会はカラオケい行く事が多くて、社長達に着いてくる事は珍しい。なんで、ここに来ちゃったんだろう？


　座る場所を分けられた事で、自分が一也との身分の差のような物を感じた。遠目に一也を見て、住む世界が違う事を改めて知った。



　ふうー

　思わずため息が漏れた。


「全く！　喧嘩の理由はなんなのよ？」


　堀野さんの言葉に、はっと我にかえる。また、ため息をついていたんだ……


　そう、喧嘩。　
　喧嘩したんだ……


　理由と聞かれ、まさか、寝てる間に裸にされたとも言えない……



「うーん。価値観の違いですかね？」

　正直な話でもないが、全くの的外れでもない答えを返した。


「価値観？　大事な事でもあるけど、一緒に暮らして気づく事もあるからねえー。　上手く言えないけど、同じだからいい事と、違うから上手くやれる事もあるんじゃない？」


「うーん。難しいなあ……」

　


「あら、そう？　喧嘩して、嫌いになったの？　もう、好きじゃないの？」


「えっ？」