となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 俺は、彼女の座るベンチの隣に腰を下ろした。

 この時、おれは初めて彼女の置かれている立場を把握する事が出来た。
 さすがの俺でも、こんな状況の彼女に声をかける事が卑怯な事くらいは分かる。でも、今の俺は、ただ、彼女のそばにいたい。彼女が少しでも救われるなら、なんでもしたい。そんな思いだった。
 

 彼女は、俺が隣に座った事が嫌であるかのごとく、チョコ入った箱の蓋を締め出した。

 俺は、彼女が去る事を感じたのだが、咄嗟に引き留める言葉など浮かばなかった。


 彼女が悲しそうに食べたチョコレートを、俺が背負ってやりたかった。


 俺は、彼女の目の前に、手のひらを差し出した。


「もらってやる」



 すぐに彼女が、俺だと気付くと思った。

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