となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
「どうして…… ここに?」

 なんとか、声を出して聞いた私の手は、いつからか、広瀬さんのコートの端をギュッと掴んでいた。


「どうして?って…… 感だよ感? 友里に危険が迫ってる気がした」

 広瀬さんは、少し楽しそうにほほ笑んで言った。


「そんなバカな……」


「友里をアパートに帰したくなかった。なんか嫌な予感がしたのは本当だ。俺は、友里を守るためならいつだって駆けつける。だから心配するな」


 今そんな事を言われたら、私の涙腺は破壊しまう。


「うわーん。怖かったよ~」

 私は、子供のように声を上げて泣き出してしまった。

 怖かったのか? 悔しいのか? 悲しいのか? それとも、安心したからなのか? 嬉しかったのか? 私の涙は、次から次へとあふれ出してくる。


 広瀬さんの腕が伸びてきて、私はすっぽりと大きな胸に包まれた。それが、また私の涙をあふれ出させた。


「大丈夫だ…… 大丈夫だ……」


 広瀬さんは、私の背中を優しくなでながら、何度も言ってくれた……


 
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