世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ




「ちゃんと持ってろよ」



落としたものを詩優が拾って手渡してくれる。
私が落としたものは、催涙スプレーの小さなスプレー缶。




「あ、ありがとう」


「おう」




手渡されたものをポケット中へとしまうと、詩優は私の手の上に自分の手を重ねる。

…やっぱり、詩優は私が行くの嫌だったのかな。




「ごめんね、詩優。またわがまま言って…」




そう謝ると、彼は




「あの時のあの約束、忘れんなよ」




と言う。




あの時のあの約束?
首を傾げると彼は





「花莉は俺の言うこと、なんでもたくさん聞くんだろ?」





そう言って口角を上げる。

その言葉で思い出したのはあの雨の日の、詩優とした電話。私は冬樹くんを部屋に泊めたいがために詩優に『あとでなんでも、たくさん言うこと聞くから』と言ったんだ。





「あの時俺、忘れんなよって言ったのに今忘れてただろ」




詩優に痛いところを突かれる。

確かに…少し忘れてしまっていたけど。あれからずっと詩優のことで頭がいっぱいだったんだ。





あの約束は私から言ったものだからこれは忘れていい理由にならないけど…。


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