世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
私の上に跨っていた男は倒されて、ゆっくり目を開けると確かに目の前に詩優の姿があった。
「…詩優っ」
周りにいる男たちをすごい早さで倒していくと、私の手を取って起き上がらせてくれる。
私は慌てて落ちているスタンガンと催涙スプレーを拾った。
「こっち」
手をひいて、走り出す詩優。
…明日葉と壮くんは!?
足を動かしながら2人がいた方へと目を向けると、明日葉と壮くんが背中合わせで戦っていた。
…怪我はなさそう。
…良かった。
「待ちやがれ!!!!!!」
後ろからは追ってくる男たち。
私はひたすら後ろに向けて催涙スプレーを噴射しながら走る。
こういう非常事態の時だけでも早く走れるようになればいいのに…。
そう祈っても私の足は遅いまま。
詩優は前方から殴りかかってくる男たちの拳を避けて、脇腹に拳を入れて。
止まることなく倉庫の扉に向けて走り続ける。