ホームズの子孫には敵わない
ただいま
フランスからイギリスに戻った時、まるで長い間帰らなかった家に帰った時のような、懐かしく温かい感じがした。

私、(くるみざわわか)はその懐かしい空気を吸い込む。フランスにいたのは少しの期間だけのはずなのに、不思議だ。

「懐かしいか?」

同居人であり、世界的に有名な探偵の子孫であるシャーロック・ホームズさんが私に微笑む。私は素直に「はい」と頷いた。ホームズさんは、私の頭を優しく撫でてくれる。

「ホームズだけずるい!」

そう言い、私の頭にホームズさんとは違う手が重なる。私が看護師として働く診療所の医師であるジョン・H・ワトソン先生だ。

私は、ある犯罪者に狙われている。私自身は気が付いていなかったけど、ずっとホームズさんとワトソン先生に守られていた。それが申し訳なく思い、幼なじみの羽馬園子(はばそのこ)ちゃんのいるフランスに行ったんだけど、二人とイギリスに帰ることを選んだ。

「よかったね、迎えに来てもらって」
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