キミ観察日記
 与一は少女を部屋に連れて行くと、足枷をつけた。

「悪く思うなよ。一人にするときは、こうしていろと言われている。ひょっとしてお前、ここまでしておかなきゃ徘徊でもするのか?」

 少女は足枷を、じっと眺めている。

「さすがに面倒みるって言っても四六時中は無理だからな。僕は、やることが色々とあるんだ。洗濯機のスイッチを入れ、食べ終わった食器を片し、そうしているうちに昼食の準備を始める」

 おどけた顔で与一の話を聞く少女。

「買い出しにも行かなきゃならない。まあ、冷蔵庫には食材がふんだんに入っていたから数日はもつだろうから。そこは後回しにしても問題なさそうだが、レポートだって……。そういえばお前は宿題とかないのか」
「しゅくだい?」
「とぼけても無駄だそ。学校で渡されたのがあるだろう? 取りかかる前からやる気の失せる分厚いプリントの束や、読書感想文なんかが。まあ、どうでもいいがな。きちんと毎日やらなきゃ泣きをみるのはお前だ。忘れて叱られるのもお前だ」
「……ガッコウ」
「これでよしと。猿ぐつわと手錠は外しておいてやるよ。これなら部屋の中で本を読んだり絵を描くくらいのことできるだろ。そうだな。トイレに行くときは声をかけろ。あとは急用以外呼ぶなよ?」
「ヨイチ、おしっこ」
「先に言え!!」
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