敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
眼鏡をはずすときからクラクラしていた私は、唇を重ねられたらわけがわからなくなった。

直に感じる熱や息づかいに全身が甘く痺れて、溶けそうになって。ただただ翻弄されていたら、ある瞬間に頭の中でなにかがショートしたかのごとく、記憶が曖昧になった。

そうして気がついたら、ベッドの上で朝を迎えていたのである。

おそらく、予期していなかった異常事態に脳が対処しきれず、意識が飛んでしまったのだと思う。

いくら好きな人と親密になれて嬉しかったといえ、こんな醜態をさらしてしまって、自分に辟易する。今度こそ本気で変なやつだと思われたに違いない。

あれから生巳さんはいたって普通に接してきて、キスのことには触れないし。優しいから態度に出さないだけで、絶対引かれているよ……。

意識が遠退く瞬間、『好きだ』と言われた気がしたのだけど、あれはきっと都合のいい夢だろう。だってそんなこと、ありえないもの。

生巳さんも酔っていただろうし、大人の男性だし、ああいう雰囲気になってもおかしくはない。

一夜の軽い過ちとして、忘れたほうがいい──。

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