触りたい、縛りたい、愛したい  〜例え許されない恋だとしても〜




「卒業おめでとう!私たちそろそろ行くわね?」




仕事は2人とも半休にしてたみたいでこれから戻るそう。
奈那が空いた途端、またもみくちゃにされてる。
俺も蚊帳の外だ。




お前ら必死過ぎ……まぁ、進学先が違うから仕方ないか。
俺だって同じ立場なら必死こいて写真の一枚くらい撮りたいと思うもん。
きっと憧れて毎日指咥えて見つめるだけの何もない日々。
最後の思い出として今日は勇気振り絞ってたかも知れない。




いや、遠くから一枚撮ってただけかも。
昔の俺なら見てるだけで充分…とか言ってたね。
ただ勇気出せないだけなんだけど。
告白もせずこのまま終わってた…?
自分の中でもがいて掻き消して……
きっと蓋をする。




もしも俺たちが全くの他人同士で、何らかの形で同じ高校に通うだけの仲なら。
こんな人気者なんだ、顔くらいは見るだろう。
そしたら絶対に一目惚れはする。
でも接点なんてないはず。
じゃあどうするんだ…!?




「ヒロ…」なんて呼ばれることもない。
あの笑顔はいつも誰かに向けられていて俺に向くことはないんだ。
万が一どこかですれ違ったとしても、学年が違うし話すことはない。




マジか……それは絶対に嫌だな。
ていうか耐えられない。




「ヒロ〜お待たせ」




「えっ!?どうしたの、それ…」




ようやく一段落ついて帰りの時。
ブレザーのボタン全部剥ぎ取られていた。




「取られちゃった……こういうのってモテる男子がされることだよね、ハハハ」




「わ、袖口も全部取られてる…」




「危うくブレザーも脱がされそうになってさすがに寒いから拒否った…」




「えっ、まさか男子にじゃないよね!?」




「ううん、後輩の女子たちだよ」




部活にも入ってないのに凄い人気だな。
花束や荷物を持ってあげる。




「ありがとう」の笑顔。
ローファーに履き替える時に腕に捕まる仕草。
並んで歩いてもやっぱりまだたくさん声をかけられてる。
まだ一緒に写真撮ってくださいもある。




帰り道。




「えっ!?もし私たちが家族で出逢ってなかったらって?そんなこと考えてたの!?」




「うん……何となく考えちゃって」







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