触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
「ヒロ?」
呼ばれたけど振り向けない。
素っ気ないフリして「何だよ」と背を向けたのに後ろから指で頬を突かれた。
「ヒロ、童貞でしょ?」
思わず振り向いて顔を見る。
声にならない驚き。
奈那の口からそんな言葉が出てくるなんて……
しかも真顔で言うか!?
「べ、別にいいだろ!」
再び背を向け拗ねたように三角座り。
反応したとこ見られてませんように…!
「そっか、そっか」って何で笑うんだよ。
男としては一番触れてほしくないとこだぞ。
パンパンとスカートをはたくから
「え?もう行くの!?」と奈那を見る。
「うん、もう授業始まってるけど次は生物だし受けたいから」
「あ……じゃあごめん、こんなとこ引っ張って来ちゃって」
「こう見えて私、先生たちには真面目ちゃんで通ってるから保健室で寝てました〜って言えば信じてもらえるから平気だよ?」
「あ、そう」
「それと今の件、相手がヒロだってバレてないと思うけど万が一聞かれても上手く誤魔化してね?」
「上手くって…!?」
「え?上手くっていったら……上手く!?じゃあね〜」
全然答えになってねぇ…!!
クソっ、どうせ俺は奈那にとってその場しのぎのコマに過ぎないってわけだよな。
告白断るのダルいから丁度いいって。
まだ反応したままだから下手に動けず丸くなる背中。
情けねぇ……
パタパタとまた足音がしてビクッとなる。
今度は何だよ!?
心臓に悪いからもう止めて…!?
「あ………」
再び現れたのは笑顔の奈那。
戻って来たの……?
「はい、これ」と投げられたのは自販機で売ってる紙パックのストロー付きカフェオレ。
慌ててキャッチ…!
「頭使ったでしょ?それ飲んで冷やして?頭も……そこも」
「え……?」
そこも……って完全に俺の反応したとこ指差してる…!!
恥ずかしくて思わず両手で隠した。
「じゃあね〜」って思いきり笑い堪えてるじゃんか。
奈那にそこイジられるのはこの上ない屈辱。
嗚呼……おれ…………オワタ。