僕を壊したのは君だから。
朝比奈くんが視界の外に出ると同時に私は瞼を閉じた。



半袖を脱いだ背中に伝わる冷たさは
水みたいに揺らいでいる幻覚。


体が沈み込みそうだ。



「……そっち見ないけどこうやって手は握ってて。俺が力入れたらちゃんと握り返してよ」


頷く代わりに、手に力を入れ返すと、

――ガン、ガンッ!


乱暴にプレハブの壁を蹴る音が響きはじめた。


時折繋いだ手に力がくわえられて、私も時間をかけて返す。



「おい!だれかぁ!!」




初めて聞いた朝比奈くんの大声。
普段じゃ想像つかないような焦り方は不安になるけど、


それを打ち消すのは、繋がれた手がくれる安心感。



……だけど私、そんなに危ないのかな。



答え合わせのように頭が強烈に痛んできた。



具合悪い……。助けて神様……。


「はぁ……はぁ……」


私の呼吸音をかきけすように
朝比奈くんの大声は何度も助けを求め続けた。

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