僕を壊したのは君だから。

手をそっと取ってみれば、やっぱり腕のところ擦りむいてる。


「なに?」


って、本当に不思議そうに言わないでよ。


アドレナリンとか出てて気づかないの?


「血が出てる、ここ」

「あー、ほんとだね」


怪我した腕をさっと後ろに隠す、そういうとこが他人本位。


「ごめんね……。保健室行こう?」

「えーいいよ」

「だめ。ばい菌がはいるかもしれないし、もっとケガしてるかもしれないもん」

「宮岡さんが診察してくれるなら行く」

「……」

「無視?」


無視だよ。馬鹿……。


「って、なんで歩かないの?行こうよ?」


「あー具合悪い。宮岡さんが運んで」


両手を差し出す朝比奈くんは、具合が悪いとは思えない楽しそうな声だ。


でも、本当に具合が悪いかもしれない。


だって今10段くらいの階段を転げおちたんだから、急いで運ばないと……!


背中を向けて、少しかがみながら両手を後ろへと向ける。


「どうぞ、乗って?」


と、口からも姿勢からも伝えているというのに、待っても待っても朝比奈くんは乗ってこない。


……どうしたの?


そのままの姿勢で振り返ったら、朝比奈くんは笑いをこらえきれずに震えてた。


ぷるぷると、すっごく笑ってる……!


「なっ、なんで笑ってるの!」


「……っ、健気な、背中だなって! あはは」


「もう!こっちは本気で心配したのに……っ」



声を出して笑う朝比奈くんは、真っ赤な顔して怒る私の後ろからそっと抱きしめた。


ぬくもりに混ざる甘いフレグランスの香りに包まれて


「……いとしー。超かわいい」


そんなこと言われたら誰だって、心臓おかしくなっちゃうから。



「……っ、ばか!」


< 90 / 139 >

この作品をシェア

pagetop