僕を壊したのは君だから。
手をそっと取ってみれば、やっぱり腕のところ擦りむいてる。
「なに?」
って、本当に不思議そうに言わないでよ。
アドレナリンとか出てて気づかないの?
「血が出てる、ここ」
「あー、ほんとだね」
怪我した腕をさっと後ろに隠す、そういうとこが他人本位。
「ごめんね……。保健室行こう?」
「えーいいよ」
「だめ。ばい菌がはいるかもしれないし、もっとケガしてるかもしれないもん」
「宮岡さんが診察してくれるなら行く」
「……」
「無視?」
無視だよ。馬鹿……。
「って、なんで歩かないの?行こうよ?」
「あー具合悪い。宮岡さんが運んで」
両手を差し出す朝比奈くんは、具合が悪いとは思えない楽しそうな声だ。
でも、本当に具合が悪いかもしれない。
だって今10段くらいの階段を転げおちたんだから、急いで運ばないと……!
背中を向けて、少しかがみながら両手を後ろへと向ける。
「どうぞ、乗って?」
と、口からも姿勢からも伝えているというのに、待っても待っても朝比奈くんは乗ってこない。
……どうしたの?
そのままの姿勢で振り返ったら、朝比奈くんは笑いをこらえきれずに震えてた。
ぷるぷると、すっごく笑ってる……!
「なっ、なんで笑ってるの!」
「……っ、健気な、背中だなって! あはは」
「もう!こっちは本気で心配したのに……っ」
声を出して笑う朝比奈くんは、真っ赤な顔して怒る私の後ろからそっと抱きしめた。
ぬくもりに混ざる甘いフレグランスの香りに包まれて
「……いとしー。超かわいい」
そんなこと言われたら誰だって、心臓おかしくなっちゃうから。
「……っ、ばか!」