缶コーヒー
そんな彼女を愛おしく思った。でもどうしても引っかかる。「なんで君は無糖で僕はミルク入りなんだよ、僕だって無糖で大丈夫なのに」本当は無糖なんか飲んだことないのに見栄を張って僕は調子に乗ったことを言ってしまった。「ふーん。じゃあ飲んでみて決めたらどう?」僕にコーヒーを差し出してきた。勢いに任せて飲むと思ったより苦くて。「うぇっ」
「あははは なんて渋い顔してるのよ」
僕が無糖が飲めないことなんて彼女はお見通しのようだ。2人で笑った。無言が続いて彼女は僕のポケットから手を抜いた。少し寒さが増して見上げると空が薄暗くなってきた。さっきまで笑ってたというのに彼女はどんよりとしている。目にうっすら涙さえ浮かべて。「なんか寒くなってきたしそろそろ帰るか」
「待って。言わなきゃいけないことがある」
彼女は僕の手を掴んだ。そんなふうに僕にすがるのは初めてだ。いつもニコニコしているが今、彼女は真剣な眼差しを僕に向けている。涙がこぼれそうになりながら。
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