懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「取り戻されるおつもりですか?」
成島の質問にフンと鼻を鳴らす。
「金で終わりにしようと言われたよ。俺の子どもを身ごもっているのに、俺は必要ないらしい」
自嘲気味に言い放った。成島にこんな弱いところを見せるのは初めてだろう。
「……まさか。彼女がそんなことを?」
成島の顔色が変わる。普段感情をあまり見せない男がそうなのだから、亮介が打ちひしがれるのも無理はない。
「笑えるだろ? いつまでも忘れられなかったのは俺だけだったってこと」
亮介は手を解き、椅子の背もたれに体を預けた。一度だけでは飽き足らず、まさか再度請求されるとは。
「いえ、そんなはずは」
「……〝そんなはずは〟? どういう意味だ」
成島の不可解な発言に亮介の耳が反応する。成島はハッとしたように居住まいを正した。