懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
そこでようやく興味をもったらしく、隆一が顔を向ける。
だが、今から口にする名前が隆一の顔を曇らせるのは予想がついた。
覚悟をもってここへきたとはいえ、緊張せずにはいられない。なにしろ半年前に亮介と里帆を別れさせた張本人なのだから。
軽く深呼吸をして心を落ち着ける。
「立川里帆さんです」
隆一の眉がピクリと動いた。心なしか目が鋭くなる。
「……なにを寝ぼけたことを言ってる」
「寝ぼけてないし冗談でもありません」
「ばかばかしい。彼女ならとっくに別れただろう」
隆一は鼻を鳴らしてコーヒーカップを乱暴にテーブルへ置いた。
「昨日から一緒に暮らしています」
「……なに?」
ワントーン低い声がリビングに響く。部屋の温度が僅かに下がったのは気のせいか。
それでも怯むわけにはいかない。