懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


「里帆は、こういった細かいことによく気が回ったから、取引先からの信頼は厚かったんだ。今だから言えるが、何社かから引き抜きの話まであったくらいだ」
「えっ、そうなんですか?」


それは里帆も初耳だ。


「今だから言える話だよ。もちろん即座にお断りしたけどね」


亮介は片目を瞑り、軽くウインクをした。

秘書としては一年にも満たないし、まだまだ経験不足だろうが、外部からのそうした評価はとてもうれしい。なにより亮介が即断ったというのが、心をくすぐる。


「そんなスーパー秘書さんの後釜なんて、俺に務まるのかな……」


つい先ほどまで軽いノリだった野崎が、突然神妙な顔つきになる。不安でいっぱいなのは目に見えて明らか。


「野崎さん、大丈夫ですよ。私だって初めは手探り状態でしたから」
「……そうでしょうか」
< 237 / 277 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop