懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「里帆は、こういった細かいことによく気が回ったから、取引先からの信頼は厚かったんだ。今だから言えるが、何社かから引き抜きの話まであったくらいだ」
「えっ、そうなんですか?」
それは里帆も初耳だ。
「今だから言える話だよ。もちろん即座にお断りしたけどね」
亮介は片目を瞑り、軽くウインクをした。
秘書としては一年にも満たないし、まだまだ経験不足だろうが、外部からのそうした評価はとてもうれしい。なにより亮介が即断ったというのが、心をくすぐる。
「そんなスーパー秘書さんの後釜なんて、俺に務まるのかな……」
つい先ほどまで軽いノリだった野崎が、突然神妙な顔つきになる。不安でいっぱいなのは目に見えて明らか。
「野崎さん、大丈夫ですよ。私だって初めは手探り状態でしたから」
「……そうでしょうか」