懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


里帆が手切れ金を受け取らなかったのを亮介に報告しなかった償いでもあったのかもしれない。
ふたりがもう一度再会すれば、きっと違う形の未来になるはず。
祈りを込めて、亮介を送り出したのだ。

でも、今さらそんな真実を暴く必要はない。幸せなふたりには、奇跡の再会のほうがお似合いだ。


「……そうか。忙しいところ邪魔したな」


亮介もそれで納得したらしく、今度こそ秘書室から出ていった。
ヒヤッとさせられた成島は、深く息を吐きだした。


「成島室長、相当なこじらせ男ですね」


恭子がクスクス笑いだす。


「放っておいてください」
「いいえ、放っておけませんよ」


恭子はそう言いながら、成島の前に立ちふさがった。

これ以上いったいなにを白日のもとに晒す気か。
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