懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


働き手はひとり。育児もひとり。三百六十五日がひとりづくしなのだ。
仕事をするには子どもの預け先が必要だし、病気になったときの対応も考えなくてはならない。


「立川さん、ご両親を亡くされているでしょう? 実家のサポートもなく完全にひとりで子育てをするとなると、かなり厳しい状況下に置かれるのは予想できるわ」
「……先生は、私に堕ろせとおっしゃるんですか?」


もはやそう言われているようにしか聞こえない。
唇がわななき、足と手が震える。

何度も何度も悩み、やっと出した結論だった。それを伊織が覆そうとしているようにしか思えない。


「そうじゃないわ。落ち着いて、立川さん」


伊織が冷静に里帆を宥めようとする。


「だって先生が……! 私、たくさん考えたんです。最初は堕ろすしかないって思っていました。父親がいないのをわかっていて産むのは、私のエゴじゃないかって」


いくら知らせないとはいえ、亮介の承諾もなしに勝手に産んでいいのかと。
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