オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
「こんなんじゃ満足できねぇくらい幸せにす

る。」

「私も負けないくらい蓮人を幸せにする

ね。」

初めて会った日よりも大人びたももの笑顔は

今までで一番綺麗だ。

「ももちゃん!蓮人さん!おめでとう!」

「おめでとうございます。」

カフェに明かりが点くと、温かい祝福の拍手

に包まれた。

「ももちゃん、蓮人。おめでとう。」

龍也は目に涙を浮かべて笑ってくれている。

龍也が泣いてるところ、初めて見たかも。オ

レ達のことを一番近くで見守ってくれていた

のは龍也だ。

「龍也。お前の言う通りになったな。」

それは初恋を知った日。

『蓮人の周りは、必ず大事にしたい人で溢れ

るから』

龍也がくれた言葉。家族も知らない、愛も知

らないオレが、初恋を知って、家族を知っ

て、親友と呼べる奴ができて、オレを慕って

くれる後輩ができて、愛しい彼女ができた。

「オレの周りは今、大事にしたい人で溢れて

る。ありがとな。」

きっと龍也がいなかったら、この景色を見ら

れなかった。今日くらい素直に伝えたい。

「蓮人のくせに素直じゃん。」

龍也が泣きながらも優しく微笑むから、オレ

まで泣きそうになる。

「ももちゃん、幸せになってね。」

「ありがとうございます…!」

親友と同じ奴を好きになって、オレはこの恋

から逃げようとした。家族も愛も知らないオ

レに誰かを幸せにする自信なんてなかった。
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