オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
立派な大人になったあなたにお伝えしなけれ

ばいけないことがあります。

あなたのご両親が亡くなったのはあなたが4

才の頃でした。あなたにご両親との思い出が

ほとんどないのも仕方がないかと思います。

しかし、あなたはご両親を亡くしたショック

で、家族の記憶だけを消しているのです。

当時、幼い蓮人くんに伝えるべきではないと

決断し、あなたに今日までお伝え出来ません

でした。あなたのお母さんとお父さんは、あ

なたを誰よりも愛していました。それはきっ

と今も変わらないでしょう。

私からの最後のお願いです。

いつかご両親のことを思い出す時が来たら、

記憶の中のご両親と同じように、大切な人を

愛してあげてください。

いつでも施設に元気な姿を見せに来てくださ

いね。」

オレは記憶障害を持っているらしい。

それは数年前からなんとなく気が付いてい

た。手紙を読んでオレが驚いたのは、先生が

オレの両親を知っていたこと。

「先生とオレの両親はどういう関係だったん

ですか?」

「蓮人くんの両親とは、中学時代からの友人

よ。」

そんなことなら普通に話せるはずなのに。

先生は何かを隠している。

先生の手の震えを見て、そう確信した。

「先生は親代わりになって育ててくれまし

た。」
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