オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
「よしっ。」

オレは家を出る前に一つ気合を入れた。

クラスみんなで作った文化祭に対してじゃな

く。人生初めての告白に向けて。

それなのに。

「松井くん!聖菜が帰ってこないの。」

クラスの女が不安そうにオレに話した。

トイレに行ったっきり帰ってこないので、一

人が見に行ったらしいが、個室は全て空いて

いたんだそうで。

聖菜が気まぐれでももといるかもしれない。

偶然会った中学の友達と話してるだけかもし

れない。

だけど、オレは一瞬で聖菜が危ないと思っ

た。

考えるより先に体は動いて、あてもなく騒

がしい校内を走り回った。

そして偶然見かけたももに聖菜がいなくな

ったことを告げると、これまで見たことが

ないほど顔を歪ませていた。

オレがももを落ち着かせようとしたそのと

き、後ろから聞き馴染みのある声でももの

名前が呼ばれて。

「龍也さん!聖菜を探すの手伝ってくださ

い!」

みっともないよな。だっせぇよ。好きな女

ひとり守れないし。オレが聖菜のこと一番

わかってるはずなのに。

「手分けして探そう。」

龍也さんの冷静な一言が引き金となって、

オレの足を勢いよく走らせた。

絶対見つけてやる。

聖菜を見つけるのはいつもオレだけだった

だろ。

聖菜が好きなかくれんぼをした時も、おつ

かいの帰りに迷子になった時も。中学校の

修学旅行でも。
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