初めての to be continued…
9. 芳子
 今、雄大がお風呂に入っている。

 私はさっき上がってきた。
 凄く迷った末に、いつも通り下着をつけて、パジャマを着て部屋に戻ると、雄大が珍しそうに私を見た。
「パジャマって新鮮」
 照れくさそうに笑う。こっちまで照れてしまう。
 照れ隠しに、丁寧にご挨拶。
「お風呂、お先にいただきました」
 ぺこりと頭を下げると、雄大も同じように頭を下げた。
「じゃあ俺も入ってきます」
 雄大はすれ違い様に、私を一瞬だけ抱きしめて、おでこにキスをしていった。

 残された私は、腰が抜けそうだった。
 ふらつく足をはげまして、なんとかベッドに座る。

 なにこれ。雄大ってこんなだった?
 甘過ぎて、困ってしまう。
 どうしたらいいのかわからなくなる。
 でも、嬉しい。

 座ったまま呆けていたら、雄大がお風呂から上がってきた。
 見ると、Tシャツにトランクスだった。
 慌てて目をそらす。
「ゆっ雄大、なんで」
「え、なんですか?」
「なにって、あの、さ、寒くないの?」
「は?」
 雄大はきょとんとしていたけど、すぐに『ああ』と笑った。
「俺、寝る時はいつもこれなんで」
 こともなげに言って、冷蔵庫から麦茶を出してきた。
「すぐに布団に入れば、別に寒くはないですよ。俺、寝相悪くないし」
 コップに麦茶を注いで、私にもくれる。
「そういう問題じゃなくて……」
 素知らぬ顔で『はい』と渡してくる。
「本当に寒い時にはスウェット着ますけどね」
 そう言って、麦茶を一気に飲んだ。
 コップを持ったままの私を、優しい目で覗き込む。
「芳子さんは、パジャマ可愛いですね」
 からかってる笑い方。
 ちょっとムカつく。
 私も、持っていた麦茶を一気に飲んだ。
 空になったコップを見つめる。
 雄大のTシャツ姿は見慣れてるけど、それはあくまで上半身だけで、トランクス姿なんて見ていられない。

 雄大の両手が、視界に入ってきた。
 コップごと、私の手を包み込む。
「……あったかい」
「風呂上がりなんで」
 手をからめるようにして、コップだけ取って、片手でテーブルに置く。
 もう片方は、私の手を包んだまま。
「芳子さんの手、やわらかい」
 恥ずかしくて引っ込めようとしたら、逆に引っ張られてしまう。
 雄大の胸に飛び込んでしまった。

 Tシャツが薄いせいか、今までよりも体温を近くに感じる。
 あったかくて、安心する。



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