リペイントオレンジ🍊

「やだ、泣かないでよ!しんおんちゃん」

「全く尊のやつ、こんな可愛い女の子を泣かせるなんて、罪なヤツだなぁ」


そんな2人に、首を横に振りながら声を押し殺して泣く。


菅野さんは悪くない。
悪いのは全部、全部、私で、この涙もきっと半分は自分の不甲斐なさから来ている。


"知らない"は時に残酷だ。

簡単に相手を傷つけて、"知らなかった"で済ませてしまえるんだから。



「尾崎ちゃん、酒はもうその辺にして。この間は飲ませすぎてしまって反省していたんだ。決して強いわけじゃないだろう?」

「……でも、飲みたい気分なんです」

「酒は飲んでも飲まれるな、よ?ほら、今日はお酒もうおしまい!尊のせいでせっかく楽しい晩ご飯が台無しになっちゃって、ごめんね」

「……っ、いえ。教えてくれてありがとうございました」


もっと近づきたいと思っていた。

菅野さんをもっと知りたいと思っていた。


だけど、いざ知ったら



菅野さんが、もっともっと遠くなった気がして、この恋の終わりが見えた気がして……。


せめて、最後に謝りたい。
自分勝手な言葉で、菅野さんを傷つけたこと。

だけど、そんな謝罪すらも


菅野さんを傷つけることになるかもしれない。
そう思ったら、このまま何も聞かなかったことにして、菅野さんへの気持ちを諦めることが、私にできる菅野さんへの誠意なのかも、なんて。
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