リペイントオレンジ🍊
───お前の、笑った顔が好きだ。
きっと、そこに深い意味はない。
変に期待することは、もうしないと決めた。
「菅野さん、」
「ん?」
「……私、もう菅野さんには会いません」
「は?」
きっと、菅野さんが抱えているものを、一緒に背負わせてもらうことはできないけれど。
菅野さんが、好きだって言ってくれるなら……私はもう泣きません。ずっと笑ってます。
どんなときも、笑顔でいます。
「私、要領が悪いので。こうして会っていたら、菅野さんのこと忘れられないんです」
「…………」
小さく菅野さんの胸板を押し返して、その胸の中から逃げ出す。
「これ以上好きになったら、後戻りできなくなっちゃいそうなので……、今日で最後にします」
「後戻りなんて、」
小さく何か言いかけて、だけどすぐに、言葉を飲み込んでしまった菅野さんに微笑む。
「大好きなさとこ先生の息子さんが菅野さんみたいな方で良かったです。あ!……もう、今日みたいに海穂さんや堀さんに呼ばれても私を迎えに来ちゃダメですよ」
気持ち、抑えられなくなっちゃうので。
「……どうせ”最後”にするなら、あと1回だけ付き合え」
「え……?」
「一緒に、行きたいところがある」