リペイントオレンジ🍊


「わ、私とですか?」

「あぁ。……また連絡する。とりあえず、今日のところはもう帰って休め」



すっかり酔いが醒めてしまった私を、それでもしっかり玄関の前まで送ってくれた菅野さんは、

『お子ちゃまは早く寝ろ』

なんて決めゼリフを残して何事もなかったように帰って行った。


あのキスにも。あの好きにも。


ひとつも深い意味なんてない。
……分かっているのに、私の身体からはいつまでたっても熱が抜けなくて。


これじゃあ、ある意味、酔っ払いのままだ。


思いもしなかったです。
電話口での第一印象は最低最悪で、初対面での印象もやっぱり驚くほどに最悪で……。

それなのに今は、


こんなにも、こんなにも、菅野さんを求めて心が叫んでいるなんて。


あの日の私が知ったら、驚きすぎて悲鳴でも上げるんじゃないか……なんて。そんなことを本気で思ってしまうような出会いだったから。
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