リペイントオレンジ🍊



「これは、ドライスモークという安全性の高い擬似煙をテント内に充満させて、その中を人が通り抜ける事で火災時にどの様に避難したら良いか訓練をするもので、体への危険はありません」

「っ!?」



そこまで話し終えた菅野さんと、ふいに視線が絡む。
間違いない。この顔は……「最初から最後まで俺に説明させやがって、このクズが」って顔だ。


あとで、何言われることか……。


「最後に、尾崎先生から依頼を受けましたので、僭越ながら子どもたちに講話をさせて頂きたいと思っています」


やけに”尾崎先生”を強調して、怖いくらいの笑顔で私を見つめる菅野さんに背筋が凍る。


……助けて、誰か……本当に。



「では、質問がなければ私からは以上になります」

「今年は苦情も担当者変更願いも出なくて良かったな」

「え……?」


今まで黙って説明を聞いていた榊先生が、突然口を開いたかと思えば、冗談交じりに菅野さんへと視線を向ける。



「あぁ。お前んとこの変な新人が喧嘩売ってきたおかげで面倒な仕事が増えて困ってる」


さっきまで爽やかに説明していた菅野さんは、ここに来てその爽やかマスクを捨ててしまった。

え?表向きは爽やかイケメン演じてるわけじゃなかったの?さっきまでのは単なる仕事モード!?
< 24 / 133 >

この作品をシェア

pagetop