リペイントオレンジ🍊



***


朝、菅野さんの家から出勤したばかりなのに、菅野さんの家までの道はうろ覚え。


当たり前だ。
また訪ねるつもりも、覚えるつもりも、これっぽっちもなかったんだから。


「……着いた、ここだ」


確かこの辺り……。
いや、もっと先だったかも……なんて。

あっちこっちウロウロと不審者のごとく歩き回って、やっと見覚えのあるマンションの前。


朝は急いでたからちゃんと見もしなかったけど、改めて見ると大きなマンションだな。


「鍵、早く探して帰ろ」


菅野さんは消防署。
分かっているのに、どこかに菅野さんがいるんじゃないかと、挙動不審になってしまう。


いかん、いかん。
こんなんじゃ本当に不審者として警察に突き出されてしまう。



エレベーターのボタンを押して、すぐに開いたドアを確認した私は、”自分の部屋に帰るくらい普通に!”と自分に言い聞かせて胸を張ってエレベーターへと飛び込んだ。
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