リペイントオレンジ🍊


***


部屋の前で、何度も確認した”菅野”の名前。
鍵を差し込めば、ガチャリとロックが解除されて、菅野さんの部屋は簡単に私を迎え入れてくれた。

「……あった」


散々探し求めていた自分の部屋の鍵は、菅野さんの部屋のテーブルの下に落ちていた。


ホッと胸を撫で下ろすと同時に、どっと疲れが襲う。明日も仕事だって言うのに、私は何をしているんだろう。


「とにかく、これでやっと帰れる……」


鍵を握りしめて立ち上がる。
菅野さんに連絡……と思ったけれど。そうだ、連絡先知らないんだった。


鍵はポストに入れるんだっけ。
一緒にメモも入れておこうかな。

お礼くらいは大人として、しっかりしないとね。


バッグからふせんとペンを取り出して、一言”ありがとうございました。”とだけ書いてみる。

……なんか、文面だけ見るとすごく素っ気ない。
もっと飾った方がいいかな。星マークとか、音符マークとか……

待てよ?呑気なやつだと思われる?

ていうか、そもそも素っ気なくていいから!





< 55 / 133 >

この作品をシェア

pagetop