側にいて

「そうか。お姫さん、名前は?」

智也さんはそう言ってお姫さまの顔を覗きこん
だ。

その顔は殴られたのか、頬が赤く腫れている。

「篠宮 裕香です。」

ぐずぐずと泣きながらも答えるお姫さま。

「滴に庇ってもらったのにいつまでも泣いてる

な。どうせ滴は助かる。」

「え?」

驚いて智也さんに聞き返すお姫さま

...いや、裕香。

「あいつには、どうしてもほっては逝けない大切

な存在がいるからな」

「あの、それってどういうことですか?

前にも滴がいってましたけど。」

と、聞くのは乃愛だった。

しばらく何かを躊躇うように黙っていた智也さん

だが。

おもむろに喋りだした。

「お前らさ、滴に親が居ないことは知っているのか?」

そう聞く智也さんに全員が知っていると頷いた。

「ちょうど3年前、親を殺されたんだよ。」

「えっ、殺されたって...」

そう言ったのは乃愛。

「犯人は捕まった。勿論あいつらは今でもそんな

事許せていない。だけどな、滴が何より後悔して

いるのは妹を傷つけてしまったことなんだよ。」

「え、妹って...」

「妹は殺されてないし、ちゃんと生きてる。

だけど、妹が親の死を知ったのは1ヶ月も後の

ことなんだよ。」

「は?どういうことですか?」

そう聞いたのは晴臣だった。

「その手をまんまの意味。」

「なんで、じゃあ、妹は親の葬式すら出なかった

のかよ。」
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