側にいて

そう言う刹那に涙はそっかと残念そうに呟いた。

今は5月。

だけど涙は入学して1ヶ月も経ったのにせっかく

受かった高校にまだ1度も行ったことがない。

高校入試の時も高熱が出ていたのを解熱剤を点滴

して保健室で受けたのだ。

そして、病院に帰って来てすぐに喘息の発作が

出て、結局合格発表も見に行けず。

結果はパソコンで見て滴に合格証を貰いに

行ってもらった。

「と言うか、どうしてそんな急に?」

刹那は少し不思議そうに聞いた。

涙は今まで入院していても自分から特に

学校に行きたいなどいったことがなかった。

「だって、龍華にお姫さまができたって。」

「え?」

「だから、滴が好きになった人はどんな子なのか

知りたくて。」

そう言った涙に刹那はああ、っと頷いた。

「そう言えば、お姫さまが出来たと通達が来てた

なぁ。」

今思い出したと、刹那は言った。

「だって、私の唯一の家族だもの。私の大切な

双子の兄を傷付けるものを私は赦さないの。」

そう言った涙の目は据わっていて。

そんな涙に刹那はふっと笑った。

「そうだね。確かに俺も気になるね。大切な人を

傷つけられるのはもう、嫌だからね。」

大切な人を傷つけられるのはもうこりごりだと

二人はため息をついた。
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