12月24日の天使
目が見えてないと言われたのは2歳の時。

神木(カミキ)家は、桐谷家の親戚で、桐谷家ほどではないが、けっこう人々に知られていた。

「恋、準備できた?
今日は新入生が来る日だから、早く行かなきゃ」

「愛落ち着いて。
愛の方がいちおうお姉さんなんだからしっかりしてよ。」

「双子に姉や妹なんてありません
ねぇ、それより早く行こぉ。」

恋は大げさにため息をつくと、

「はいはい。
私のお姉さんは落ち着きがなくて困るよ。
はい、愛のカバン。」

と愛のスクバを渡すと、恋は自分のスクバを持ち、玄関に行く。
そして、ローファーを履く恋に、愛は慌ててローファーを履く。

「恋待って……ぃっ。」

恋は、愛がすごく小さな声で言った“ぃっ”に、すぐに反応し、ドアにかけた手をひき愛のところへ駆け寄る。

「愛っ。
大丈夫?
どこぶつけたの?」

愛は、ふにゃと優しく笑うと、恋が差しだした手をとり、立ち上がった。

「平気だよ。
ちょっとこけちゃっただけ。
恋も気を付けて、ここ危険。」

愛の笑みに安心したのか、恋は

「了解。」

と言い、愛の手をひいてバス停に向かった。
< 2 / 8 >

この作品をシェア

pagetop