秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「夏瑛……」と囁かれ、答えようと結んでいた唇の力を弱めたとき、その隙間から靭也の舌が入ってきた。

「あっ……、靭……」

 知識としてはそんなキスがあることも知っていたけれど、こんなにも違うものだとは思いもよらなかった。

 官能的に夏瑛の口を探る舌の動きにただただ翻弄され、気づくと重なり合ってソファーに倒れこんでいた。

 名残惜しげに唇を離し、靭也が夏瑛の頬をそっと撫でた。

 閉じていたまぶたを開けると、靭也が上から見つめている。
 いつもの優しい表情とはあきらかに違う、熱を帯びた眼差しで。
 妖しく輝くその瞳に見つめられ、夏瑛の身体の内に得体のしれない感覚が沸き上がってきた。

 これから始まるであろう未知の行為への不安に夏瑛は身を強張(こわば)らせた。
< 10 / 73 >

この作品をシェア

pagetop