秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 腕のなかの夏瑛の変化に気づき、靭也の表情から鋭さが薄れ、夏瑛から離れて身体を起こした。

「……いいのに、靭にいちゃんだったら」
 まだ身体の内側でくすぶっている鈍い感覚にとまどいながら、夏瑛は言った。

 だが、靭也は「夏瑛はまだ(つぼみ)だもんな」と言い、ふっと、小さく息を漏らした。

「美しく花がひらく瞬間を待つよ。夏瑛の身も心もちゃんと大人になるまで」
 そうつぶやくと、微笑みながら、夏瑛の頬にかかった乱れ髪をそっと耳にかけた。

(いやだったわけじゃないけど……)

 靭也と結ばれたいという気持ちは、もちろんあった。
 でも、正直に言えばそのときはまだ怖さの方が勝っていた。
 だからこうして、じれったいぐらい大事にしてくれるのは嬉しかった。
 反面、靭也の気持ちに答えられない自分がひどく子どものように思えてもどかしくもあった。
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