陰の王子様
ギリギリ腰にあった手は、ゆっくりと下に下がり、撫でられる。
離れようとすれば、握られている手を思いきり握り締められ、腰の辺りでも、がっしりと捉えられる。
足を止めれば、「終わっていないわよ!」とライラ様から怒鳴られる。
だんだんと辺りを気にする余裕もなくなる。
「良い体だ。…このまま連れ去ろうか。」
ぞわっと背中に寒気が走り、目の前の男を見れば、ニヤリと嫌な笑みを浮かべている。
「ライラお嬢様、冷えてきたので中に入っても?」
「あら、そうねぇ。中に行きましょうか。」
ダンスが止められ、ホッとしたのも束の間、ガシッと腰に手を回され、そのまま中へと連れて行かれる。
「…まだ。2人になったら愛してあげる。」