陰の王子様
それで動きが止まってしまい、周りの御令嬢たちから心にもない言葉が飛ぶ。
…気をしっかり。耐えるんだ。
ダンスをしながら、辺りに目をやる。
予知夢で見たのは、逃げまどう御令嬢たち。
火に包まれる見覚えのある屋敷
…そして、そこに取り残される私
このキース公爵家が火に包まれる原因は見ていない。
だから、誰が、いつ、など予想が立てられない。
でも、起こるのは私が招待されている日であることは確実
煙が上がっていないか、慣れないダンスに気をかけながら、目の前の相手役の距離感に耐えながら、目を向ける。
まだよ。と言われるがまま、何曲も踊らされている。
まだ、と言うわりには、完全に飽きているライラ様
踊る私たちには全く目をやらず、御令嬢たちと優雅にお茶をしている。
そして、御令嬢たちの視線がなくなったからか、相手役の御子息の行動は激しくなる。