陰の王子様
公爵夫人が矢継ぎ早に質問を投げかけている中、未だに何も考えられない私の手がそっと握られた。
「断ってもいいのよ?レティシアちゃんの好きなように。ね?」
小さな声でそう言ってくれると、頭も撫でてくれるアメリアさん
小さく頷き、盛り上がっている空間の中、静かに自分の気持ちを問う。
正直戸惑っている。
ついこの間貴族になった私が踏み入れていい世界ではない。
……でも、相手はイオ様
そう思うと胸がきゅっとなる。
少しだけ、夢を見ても良いんだろうか。
僅かな希望を持っても良いんだろうか。
いつか見た、小さな子どもを挟んで歩く4人の姿
それに私と、…イオ様を当てはめて、想像するだけ。……私の胸の中だけなら良いだろうか。
俯いていた顔をゆっくり上げ、アメリアさんと目が合う。
小さく首を傾けるアメリアさんに私は小さく、強く、頷いた。
すると、アメリアさんは嬉しそうに笑って、国王と公爵家の話を聞いていたジョセフさんの肘をつついた。