陰の王子様
目覚めてから5日後
私は城の中枢にいた。
未だに夢だと疑っているのだけど、バタバタと忙しそうに動くスズを見て、現実か、と思う。
今日から私はここでイオ様の妃として生活することになった。
まだ婚約という段階だけど。
式は数ヶ月先になるとジョセフさんが言っていた。
「レティシアお嬢様!お茶にいたしましょう!」
ワゴンを押してやって来たのは、あの時、ライラ様の使用人さんだったリン
今日、コヴィー家から城に来る馬車の中で、スズから彼女も私の侍女になったと告げられた。
なんでもあの後、城で学び直しながら、私の受け入れ準備も城でしてくれていたらしい。
スズはコヴィー家にいたから、この部屋の掃除も彼女がしてくれていた。
明るい子で、名前もスズとリンで、何だか響きが似ていて、彼女が来てくれて素直に嬉しいと思った。