1日限定両想い

「菊池先生が見た状況は確かに誤解を与えるようなものだったかもしれません。でも俺は須崎に何もしてないです。何も、できませんでした。」


一気に話した俺の最後の一言に菊池先生が顔を上げる。

須崎は俺が助けてくれたと言ったけれど、実際のところ俺は何もできなかった。

冷静さを失ってとっさにとった行動は正しいものではなかったはずだ。



『何があってん。』


正面を向いた菊池先生は相変わらず険しい表情で、いつか同じ席で1人の生徒に肩入れするのはどうかと思うと言っていた人とは思えない。

ここまで想いが変わるだけの何かが、菊池先生と須崎の間にはあったのだろう。


菊池先生は俺が話す昨日の出来事を黙って聞いていた。

須崎が課題の提出を忘れていたこと。

それによって原先生から言われたこと。

後になって怖くなったのか相談室で泣き出したこと。

その手を掴んでしまった俺の手を振り払って、須崎は座り込んでしまったこと。


一通り話し終わったとき、机を叩くドンという鈍い音が職員室に響いた。



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