1日限定両想い
「菊池先生、」
『辞めるわ。』
何かを聞こうとする俺を遮って放たれた一言が、静かな職員室に溶けて消える。
聞きたくなかった。
受け入れたくなかった。
「辞めるって、どうして…?」
『そんなん言わんでも分かるやろ。』
「でも…何も辞めることないじゃないですか。せっかく軽い処分だけで済んだのに、今菊池先生が辞めたら本当は何かあったって言ってるようなものですよ。」
一息に言ってしまうと、菊池先生がようやく手を止めた。
須崎とは何もなかった。
そう説明した言葉を信じさせてほしかった。
『お前はどう思う?』
「どうって…?」
『俺と須崎が、何もなかったと思うか。』
「それは…」
何もなかったなんて思えなかった。本当は。
でも、だからこそ信じさせてほしかったんじゃないか。
『須崎を守りたい。』
切実なまでの願いと、拭いきることのできない後悔。
ダンボールの上に置かれた拳が、強く強く握りしめられているのをただ見つめる。