1日限定両想い
「今日は泊まりか?荷物は?」
『ホテルに置いてきました。』
1度マンションを振り返って考える。
入れてもいいものか、どこか外で話すべきか。
「ほな、ホテルまで取りに行こか。」
『え?』
「ここに泊まったらええ。」
答えはすぐに出た。
ホテルに1人で泊まらせることを思うと、俺の家にいてくれた方が安心だ。
『でも、』
「大丈夫や。何もせんから。」
『先生…。』
握った手に、ぎゅっと強い力がこもる。
「車出してくるから待ってて。」
『一緒に行きます。』
手を繋いだまま、須崎が後ろをついてきた。
手を繋いで外を歩く。
たったそれだけのことが、俺たちにとってはとても大きな奇跡だ。
『菊池先生、元気でしたか?』
「まぁ、ぼちぼちやな。」
『大阪の人って本当にそう言うんだ。』
おかしそうに笑った須崎に、初めて話した日のことを思い出す。
あの日のあの瞬間、この笑顔を守りたいと思った。